私はエンターテインメント施設に来ていた。
そこでは、皆がガラスの破片を投げあい、ぶつけ合って楽しむ。ガラスの破片を投げるといっても、すべての破片は角が取れて丸くなっている。
子どものころ、川で一生懸命に集めたきれいなガラスのように。あるいは、ガラスであるのに他人を傷つけないと自らが主張しているように。
私は、メノウのように優しく輝くガラス片や、雪の結晶のように輝くガラス片のなかから、お気に入りのガラス片を探していた。
ガラス片はそのどれもが鮮やかに輝いて美しい。ただのガラスだとわかっているのに、宝石箱を広げたような気分になってしまう。
ここでは、万が一にもガラスで眼を傷つけないように、保護メガネを装着して楽しむ。
保護メガネは少しレトロなデザインだ。私は昭和に流行ったような丸眼鏡を選んだ。レトロであるが、材質は何だかわからない。フレームは丸眼鏡をのものだが、テンプルは緑色に輝き、柔らかいような硬いような、不思議な印象を受けた。
誰かにガラスの破片を投げつける。そのような行為は一般常識的に考えれば極めて危険で、取り返しのつかない傷をつけてしまうかもしれないものだ。
しかしここでは、それは合法的で、正しいレクリエーションなのだ。
私は入念に角が取られた美しいガラス片を、私の心から大切な人に優しく投げつけた。